≪モガンボ≫モガンボーー-とは、スワヒリ語で、”愛の言葉”と言う意味だそうだ。 監督自らが語っていたそうだが、複雑なラブストーリーには 全然興味がない、関心が無いそうだ。 私も、彼の男らしいドラマが好きだ。 私は小説も恋愛物は関心がない。 屁理屈を書き連ねたようなものが嫌いなのだ。 昔から純恋愛小説など読むのはガキだと言う意識、偏見が 私の中にはびこっている。 映画も小説もあるテーマの中から読者、観客がそれぞれ 想像をめぐらして、男女の愛の姿を感じ取る、、 そういった作品が好きだ。 さて、 その監督ジョン.フオードが1953年に放った異色の一作。 大人の男女三人がアフリカの奥地で繰り広げる 恋のさやあてがなかなか面白い作品である。 アフリカ奥地で仲間たちと一緒にサーカスや、 動物園に納める野獣の捕獲を 仕事にしている、ビクター(クラーク.ゲーブル)。 ニューヨークから来たショーガールの ケリー(エヴア.ガ^ドナー)。 人類学者の妻、リンダ(グレース。ケリー)。 ビクターを巡って、二人の女が恋に身を焦がす。。。。? 戦前、≪紅塵≫というやはり、クラーク.ゲーブルとジーン.ハーローが 演じた作品のリメーク版である。 アフリカの大地の情景描写も、アリゾナの荒野を美しく映し出す フオードお特意の映像でこちらも美しく詩的でさえある。 メスを巡って争うカバなど、動物の生態と人間の愛をダブらせた 描写もなかなかで、興味深い。 ビクターは野性的でエネルギッシュな人物。 女性には頼もしく魅力的に映る。 ビクターの仕事仲間のトムという人物が人間観察が鋭く、 彼らの心の動きを代弁するような運びも面白い。 ストーリー アフリカの奥地では週に一度河を上ってくる蒸気船が 文明社会との唯一のつながりである。 今は黒豹の捕獲に一生懸命なビクターたち。 今日の河蒸気のお客様はニューヨークから来たケリーだった。 彼女はインドのマハラジャに招待を受けて、来たのだが 王様はすでに帰った後であった。 仕方なく次の河蒸気が来るまでの一週間ここに留まることにした。 お行儀は良いとはいえないが、天真爛漫でさっぱりとしたケリーに ビクターは惹かれた。今まで独身でいたのは仕事のためもあったが.. ビクターは彼女に惹かれながらも、 彼女は普通の女じゃない、酒場のあばずれだろうと言うが、 打てば響くような賢さもあり、ウイットに富んだ彼女を トムは良い娘だと言った。 トムは明るく振舞う彼女の心にふっと暗いものがあるのを 見逃さなかった。 ケリーは家の周りにいる、ライオンや豹や、キリンなど 動物を全然恐れず、周りをハラハラさせるほど近づいた。 特に子象は彼女になつき、まとわりついた。 一週間が経ち、ケリーとビクターは少し親密になり、 ビクターに少しは愛されていると思ったケリーであった。 しかし河蒸気が来ても、彼女を引き止めなかった。 蒸気船に乗ると入れ替わりに、人類学者のノートリー夫妻が 下船してきた。 ノートリーは少しひ弱な感じで来る前にツエツエ蝿の予防注射のせいで、 高熱が出て着くとすぐに倒れた。 うろたえる妻リンダを無視して、薬を投与したことから、 リンダもビクターを意識しだす。 リンダは学者の妻らしく、一見上品で聡明そうで 楚々とした美しさがあったが、気は強いようである。 ”一週間にふたりも美女が来るとはな”と笑うトム。 ところが河蒸気が途中で難破したと、ケリーが戻ってきた。 ノート-リー夫妻はゴリラの生態を調べに来ていて、 どうしても生息地に行くという。 危険だから、止めろと言うビクターの諫言にも、 契約だからとノートリーは譲らない。 準備期間中に大地をみんなで、見学するが、 おおらかなケリーの言葉にノートリーは面白い人だというのに 対して、リンダはなぜかケリーに反感を持つ。 懐の深いタイプのケリーは全部呑み込んで、ビクターとリンダを 観察している。ノートリーはリンダと、ビクターが惹かれあって いることに気が付いていないが、みんなは気付いている。 トムだけはビクターに相応しいのはケリーだと思っている。 悩み始めたリンダは夫を避けてひとり、散歩に出て、 ビクターと会うようになった。 見守るケリー。 ゴリラの生息地に行く日、ケリーはなんとか体ををなしている 教会の牧師に懺悔をする。 トムはケリーに ”もう話してもいいだろう、おまえさんの傷を”と問うた。 ”結婚して二ヶ月で夫は戦地へ行って ベルリンで散ったわ。短かったけど幸せだった..” ”その悲しみから逃れるために遊びだしたのか?” ”まあそういうところね” ”ところが出会ってしまったのだな?ビクターに” ゴリラの生態観察とビクターは捕獲 という仕事の最中に、 ビクターはノートリーに 自分の気持ちを打ち明けようとしたが、 彼のリンダに対する深い愛にとうとう打ち明けられなかった。 テントで、辛さを酒で紛らすビクターにケリーは言う。 ”ノートリー夫妻は良い夫婦よ。 あなたがリンダを奪っても上手くいくはずが無い”と言いつつ、 彼を慰め、酒に付き合った。 しかし、そこにやって来たリンダは勘違いし嫉妬で逆上し、 そこにあったピストルでビクターを撃ってしまう。 幸い腕にかすり傷を受けただけであったが、音に気付いたみんなが やってきた。 ノートリーの前で、ケリーは機転をきかして、 ”ビクターはずーっとリンダを 追いまわしていたのよ。困っていたリンダはとうとう耐え切れずに ビクターを撃ってしまったの” と、ビクターを悪者にしてその場をしのいだ。 ケリーをじっと見ていたビクターは微笑んだ。 ケリーの本当の優しさに気付いたのだ。 聡明で上品なリンダではあったが、内に秘めた情熱は 自分中心で、ビクターの求めたものではなかったはずだ。 相手を思いやるケリーの良さに改めて気付いたビクター。 ノートリー夫妻は間違いを起こすことなく、 河蒸気に乗り込むことが出来た。 ビクターはさよならを言うケリーに、 ”黒豹をしとめるまでここに残ってくれ、 それが済んだら二人で牧師のところへ行こう”と ケリーに告白したが、真っ平よと憎まれ口をたたいて 彼女もカヌーに乗った。 同乗しているトムに”俺の大切な人を頼んだぞー”と叫ぶビクター・ ケリーは振り向いて、カヌーから水の中へ飛び降り、 ビクターの元へ引き返すのでした。 ハリウッドらしいさわやかさのハッピーエンドの作品でした。 なんたって、エヴア.ガードナーが素敵で、さすがの グレース.ケリーも霞んでしまいましたね。 エヴアのほうが大柄だと思っていたのに、グレースのほうが 骨太で大きい。柔らかな曲線の肢体とおおらかと、さっぱりの 性格でグレースを食ってしまった。 でもクラークには彼女がお似合いと初めから思いましたけれどね。 それにしてもフオードさん、不得手だとかおっしゃって、 男女の機微を上級ドラマに仕立てたではございませんか。 製作 1953年度 米 監督 ジョン.フオード 脚本 ジョン.リー.メイビン 撮影 ロバート・サーティース、フレディ・A・ヤング 出演 クラーク・ゲイブル、エヴァ・ガードナー、 グレース・ケリー、ドナルド・シンデン |